幹細胞培養上清液

美容医療は、大きく分けて2種類の治療があります。ひとつは顔や体の「形」を整える外科の治療で、手術や注入術などがこれにあてはまります。もうひとつは「肌」の質感や凹凸を整える皮膚科の治療です。シミを薄くしたり、ニキビ跡などの凹凸を改善したり、肌のツヤやハリを回復したりするほか、衰えた肌の機能回復を目指す治療方法があります。
幹細胞培養上清液(かんさいぼうばいようじょうせいえき)は、含有する成長因子の作用によって、衰えた肌や身体の組織に影響して機能の回復を図ることができると考えられています。そのため、主に美肌治療や疾病の治療に使用され、局所注射、外用(塗布)、点鼻などで使用されるばかりか点滴でも投与されます。
今回は幹細胞培養上清液を使用した治療の効果(メリット)や、副作用などのデメリットについて解説します。

幹細胞培養上清液とは?

言葉で聞くと難しい印象を受ける「幹細胞培養上清液」ですが、言葉をバラバラにしてみると分かりやすくなります。すなわち「幹細胞」を維持するための「培養液=培地」を用いて「培養」した後の「上清液(うわずみ液)」(=幹細胞を培養した後の培養液)のことです。
現在の再生医療において幹細胞とは、主にヒト(人間)の臍帯、骨髄、歯髄、脂肪組織などの組織や臓器内に存在する幹細胞のことを指します。(間葉系の組織や臓器から採取した幹細胞は間葉系幹細胞、上皮系組織から採取した幹細胞は上皮系幹細胞などと定義します。)これらの幹細胞は、細胞加工施設などで培養されて、再生医療に使用されるのが主流です。
幹細胞を培養した培養液の中には、幹細胞が増殖や代謝の過程で放出した500種類以上ものタンパク質でできたサイトカイン(成長因子、増殖因子ともいう)や、エクソソーム(組織や臓器の情報伝達物質)などが含まれているため、「幹細胞培養上清液にも組織の修復や再生効果があるのではないか?」という仮説が立てられ、治療に利用されるようになりました。

培養液

幹細胞培養液と幹細胞培養上清液の違い

患者さんから「幹細胞培養液と幹細胞培養上清液は違うのですか?」と質問をいただくことがあります。
単純に解説すると、「幹細胞培養液」とは、幹細胞の培養に使用する薬液を指します。別名「培地」などと言われています。普通は、幹細胞の培養に使う前の状態を示し、幹細胞が増殖するために必要な栄養だけが含まれています。
一方「幹細胞培養上清液」とは、上記の「幹細胞培養液=培地」を用いて、一定の時間幹細胞を培養して、この幹細胞の培養をおこなった後の培養液を取り出して滅菌などの加工を行って抽出した「上澄み液」のことを指します。
また「幹細胞培養上清液」にも別称があり、「脂肪細胞培養順化液」「順化培養液エキス」「幹細胞成分」「幹細胞エキス」などと呼ばれる場合もあります。

幹細胞培養上清液の期待できる効果

幹細胞培養上清液には、体内の幹細胞や細胞を活性化するさまざまなサイトカインが含まれています。一部のサイトカインを例に挙げると、以下のような働きと期待できる効果があります。

  • 上皮細胞増殖因子(EGF):皮膚のターンオーバー促進(シミ・くすみの改善)
  • 血管内皮細胞増殖因子(VEGF):血管再生作用、血管新生作用(発毛・育毛効果)
  • トランスフォーミング増殖因子(TGF-β):抗炎症作用、創傷治癒作用(抗炎症・創傷治癒・肌質改善)
  • ケラチノサイト増殖因子(KGF):ケラチノサイト新生促進(発毛・育毛効果)
  • インシュリン増殖因子(IGF):細胞増殖(皮膚再生・肌弾力向上・育毛効果)
  • 血小板由来増殖因子(PDGF):細胞分裂促進、細胞増殖

幹細胞培養上清液の効果の現れ方を点滴治療で説明すると、幹細胞培養上清液に含まれるサイトカインは血流に乗って機能が衰えたりダメージを受けた臓器に集まり、周辺の組織を修復したり、機能するように働きかけたりします。
特に解毒機能のある肝臓や、環境が乱れるとニキビの原因となる腸内が健康で正常に機能すると、肌荒れやくすみなどが解消され、肌のコンディションも整い、きれいになります。
そのため幹細胞培養上清液点滴では、身体の中から全身的な健康増進や美肌が目指せます。

また現在、幹細胞培養上清液の有効性のエビデンス(根拠、臨床結果)を証明しようと、さまざまな医療機関や研究機関、バイオ企業で、幹細胞培養上清液の臨床研究や製剤開発が行われています。

幹細胞培養上清液を使ったおすすめの治療は?

幹細胞培養上清液は、患者さんの病態に応じて作用すると考えられるため、さまざまな治療に応用されています。
PRPと同様のスキンリジュビネーション(皮膚の再生、再構築)を目的とした美肌治療、血管の新生作用や上皮系組織の活性化による発毛・育毛治療、抗炎症作用や活性酸素除去による全身倦怠治療、組織修復作用による肝機能改善や創傷治癒治療促進効果、血管新生作用・血行改善によるED(勃起不全)治療などです。

当院では、美肌治療、薄毛・抜け毛の改善、創傷治癒の促進などを目的として点滴による全身投与を行っていますが、整形外科や外科では組織の損傷部位に局所投与(注射)を行って関節や関節周囲組織の再生を図る治療や、点鼻投与して老人性アルツハイマー症や脳梗塞後の運動機能障害や認知症症状改善に用いる治療もあります。

幹細胞培養上清液のデメリットは?

幹細胞培養上清液には上記のようなさまざまな効果が期待されていますが、副作用や危険性などのデメリットはあるのでしょうか?

デメリットが考えられるケースとしては、現状の培養上清液の大半は自分の組織由来ではなく他人の組織に由来してます。粗悪品は、ヒト由来の幹細胞培養上清液ではなく、他の動物由来の幹細胞培養上清液が使用されている場合もあると言われてます。現在外国から輸入されている幹細胞培養上清液のなかには、ブタの脂肪組織を使って製造されたものもあります。
ただし動物由来の製品が直ちに危険かというとそうではありません。糖尿病の治療薬であるインシュリンは、初期はブタ由来の製剤が使用されていました。また医療に使用されるプラセンタはヒト由来の製剤ですが、ブタや馬、羊などのプラセンタは、化粧品やサプリメントに多く使用されており、効果が無いわけではありません。動物由来の幹細胞培養上清液をヒト由来だと誤認させて使用するクリニックがあり、これは倫理上の問題です。

ちなみに当院の治療では、全てヒト由来の幹細胞培養上清液を使用しています。培養の際には、海外から輸入されている製剤などと異なり、動物の血清を使用しない・汚染の心配がない無血清の培養液を用いています。
培養された幹細胞がどういった組織・臓器から採取されたのか、その組織の入手先も全て開示が可能ですので、気になる方は医師にお尋ねください。

また人によってはデメリットになる点としては、1度でも幹細胞培養上清液の点滴を受けた方は、献血ができなくなることです。
ヒト由来の製剤で、現在の検査法では未知のウイルスに感染しているかどうかが判定できず、安全性が確認できないため、日本赤十字社は献血を認めていません。これは、プラセンタ治療を行なっている患者さんと同じです。

なお、当院では幹細胞培養上清液を使用した点滴治療を行っていますが、これまでに患者さんに副作用が出た例は一件もありません。

幹細胞培養上清液の点滴の値段は?

当院の幹細胞培養上清液点滴の治療費は、5mL使用で1回・220,000円(税込)になります。
幹細胞培養上清液点滴を続けることで肌の自己再生状態をキープしやすくなるため、2週間~4週間に1回の定期的な点滴を推奨しています。定期的にお受けになる際には、5回・660,000円(税込)で提供しています。

銀座よしえクリニックの幹細胞培養上清液の特徴

当院では、聖マリアンナ医科大学の井上客員教授を技術責任者に招き、AGEL法(Advanced Growth factor Enhancing Lyophilization Technique)という安全で他に類を見ない特殊な工程によって、ヒト由来幹細胞培養上清液を製造しています。
再生医療等安全性確保法に基づく細胞培養加工施設として許可を受けたCPC(セルプロセッシングセンター:細胞培養加工施設とも言う)において、健康な成人女性の脂肪組織から採取した幹細胞を幹細胞培養液に用いて培養して、得られた幹細胞培養液から不純物や不溶物を遠心分離で取り除いたあとに濾過と滅菌を行います。不安定な凍結保存ではなく安定性を高めるためにフリーズドライ加工を施します。
私たちの技術AGEL法は、必要に応じて希望されるサイトカインを個別に増やしタイルすることが可能です。例えば血管新生を促すタンパク質である血管内皮細胞増殖因子(VEGF)及び、上皮細胞増殖因子(EGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)などが従来の製剤より多く含ませることも可能です。安全性に配慮して、培養には動物由来の血清を使用せず、ウイルスを含めた無菌試験も実施しています。
詳しくはこちら

銀座よしえクリニックの幹細胞培養上清液点滴

当院では幹細胞培養上清液の点滴治療を行っています。幹細胞培養上清中に含まれる成長因子・免疫調節因子・抗炎症性因子・神経再生因子などがそれぞれの衰えた組織に作用し、効果が発現すると考えられます。
興味を持たれた方は、お気軽にご相談ください。

この記事の監修医師

廣瀬嘉恵医師

銀座よしえクリニック 総院長廣瀬 嘉恵 医師 医学博士

  • 東京大学大学院医学研究科修了 博士号取得
  • 日本再生医療学会再生医療認定医
  • 日本再生医療学会代議員
  • 日本皮膚科学会会員
  • 日本美容皮膚科学会会員
  • 日本美容外科学会会員
  • 国際抗老化再生医療学会会員
  • 日本温泉気候物理医学会会員

銀座よしえクリニック 総院長
廣瀬嘉恵医師のプロフィールはこちら

井上 肇 客員教授 薬学博士 医学博士

井上 肇 客員教授 
薬学博士 医学博士
銀座よしえクリニック 
再生医療センター 技術責任者
聖マリアンナ医科大学 形成外科 
客員教授

  • 星薬科大学大学院薬学研究科 博士号取得
  • 日本臨床薬理学会 指導薬剤師・認定薬剤師
  • 日本創傷治癒学会功労会員
  • 日本炎症再生医学会功労会員
  • 日本抗加齢医学会評議員
  • 日本組織移植学会評議員
  • 日本再生医療学会(前代議員)

井上 肇医師のプロフィール詳細はこちら

Related posts