CPC-PRP®(高濃度プレミアムPRP)治療をはじめとする再生医療に取り組む銀座よしえクリニックでは、自院のCPC内で作成した自家PRP製剤およびPRP-C製剤のみを投与した1,340症例を対象に比較検討した実証研究を行いました。その結果、肌の老化治療効果が認められたことを報告いたします。
この研究は、銀座よしえクリニック最高技術顧問の井上肇博士により発表されたもので、論文は国際誌である「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・プラスチック・サージェリー」に投稿され、2023年3月に受理されて掲載に至りました。
本研究は、美容医療領域において歴史のあるPRP治療がこれまで統計だった研究がなされていない現状を踏まえ、PRP製剤のみの有効性を明らかにする目的で行われました。同時に無細胞療法であるPRP-C(無細胞PRP)との比較も行われ、肌の老化治療効果を検証しています。
論文タイトル
A comparative study on the influences of platelet-rich plasma vs its derived cytokines on skin rejuvenation(日本語訳:血小板リッチプラズマと由来サイトカインが皮膚の老化治療に及ぼす影響に関する比較研究)
本研究の背景
PRP(多血小板血漿)治療は、さまざまな病気に対して使用されてきた医療技術であり、特に美容医療領域では長期にわたる使用経験があります。ところが、これまで系統立った研究がなされていませんでした。
また、フィブラスト(遺伝子組換えヒト線維芽細胞成長因子、FGF)を添加して注入する治療を行うクリニックも多く、PRPそのものの効果は検証されていませんでした。
PRPのみの有効性の検討は、PRP治療を提供するクリニック側、治療を受ける患者側にとっても大きなメリットとなると考えられます。
本研究は、「PRPには効果が無い」ことを証明してしまうリスクもありましたが、研究に携わった医師のこれまでの臨床経験からも、客観的な結果を求める必要があるだろうと実施されました。
日本の再生医療は、2014年に再生医療等安全性確保法が施行されて以来、審査された治療計画に基づいてのみ治療が許可される様になりました。2014年以降の治療は、第三者的評価によって治療計画が決められるために、客観的な有効性評価が期待されます。
さらに、銀座よしえクリニックは院内にCPC(細胞加工施設)を有しており、特定の技術員が全症例のPRP作成に関わっているため、品質にブレやバラツキがないことも、客観的な評価の質の高さに貢献しています。
本研究ではPRP治療の効果検証と併せて、通常のPRPの治療でしばしば問題になるPRP施術時の使い勝手の悪さを改善させる目的で考案されたPRP-C(無細胞PRP)の効果についても比較検討を行いました。
本研究成果の概要
- 対象者
- 患者1,340人(男性125人、女性1215人)/平均年齢48.3歳
- 使用製剤
- (1)院内CPCで作成されたPRP製剤(白血球・赤血球を含まない、血小板のみ取り出したもの)
(2)院内CPCで作成されたPRP-C製剤(上記のPRPの細胞を破砕して抽出した濃縮血小板サイトカイン) - 期間
- 8週間(56日)/ 2020年2月〜6月に実施
- 観察
- 2回(4週間後士2日、8週間後士2日)
- 評価方法
- (1)患者側(5段階評価アンケート・VAS法)
(2)医師側(顔の頬と額の3D写真による皮膚の変化を比較)
(3)統計的有意差の解析(Wilcoxon signed-rank検定、Student's t-test)
本研究の内容
〈3D写真による検証〉
治療前と治療後に各部位を撮影し、患者と医師が肌の状態を評価します。PRP投与1ヶ月後、2ヶ月後に患者評価、医師評価全てにおいて、治療前に比べて有意(Wilcoxonの符号附与検定)に毛穴や凹みの数が減少していることが確認できました。
〈典型的な患者の観察〉
PRPの適用前に比べて、肌の質感と弾力性が著しく向上していることが報告されています。また、シワ(小ジワ)や法令線などの大きな溝の改善も両者で観察されました。(図1、2)
図1
68歳の女性に、6mLのPRP製剤を注入。鼻唇線の溝には治療後4週間の改善状況。治療前の画像と比較して、肌の質感や弾力性が明らかに向上していることが確認できます。また、シワ(小じわ)の改善も観察されます。これらの効果は、治療後8週目にも確認することができます。
図2
68歳の女性に、6mLのPRP-C製剤を注入。治療前と比較して、肌の質感や弾力性が向上していることが確認できます。また、シワ(小じわ)の改善も確認することができます。治療後8週目も効果は持続しています。
〈効能の評価〉
PRP療法群およびPRP-C療法群の患者評価スコア。処置後4週間および8週間におけるPRP療法およびPRP-C療法の効果に統計的有意差は認められませんでした。
PRP療法群およびPRP-C療法群の医師評価スコア。処置後4週間および8週間におけるPRP療法およびPRP-C療法の効果に統計的有意差は認められませんでした。
本研究の結果と考察
PRP療法を受けた386名の患者様を対象に4週間の追跡調査を行った結果、216名の患者様に肌のキメが整い、165名の患者様に肌のハリが改善され、132名の患者様にシワの改善が認められました。また、鼻唇線の改善は45名、顔のリフトアップは20名で認められました。
同様に、8週間後のフォローアップでは、17名に肌のキメが改善され、13名に肌のハリが改善されました。シワの改善は10名にとどまり、鼻唇線と顔のリフトアップはそれぞれ0例と3例で改善されました。
〈老化治療の結果〉
- 治療前と治療後を比較した結果、PRP療法群、PRP-C療法群ともに、皮膚の老化(醜形)治療効果が確認された。
- 主な老化(醜形)治療効果は、皮膚の質感(キメ)の改善、弾力性(ハリ)の改善、炎症性色素沈着(シミ)の改善。
- 改善効果が明確に認められなかったのは、鼻唇線と顔のリフトアップ。
〈結果をうけての考察〉
- PRPは万能ではなく、非常に効果的な有効性を示す部分と、他の技術との併用・置き換えする事で効果が期待される部分があった。この結果を受けて、今後は確実なPRP療法ができるようになるであろう。
〈PRP-Cの結果〉
- PRPとPRP-Cは、同様の結果が認められた。
- PRP-Cに含まれる微量のサイトカインが、上皮細胞や線維芽細胞に働きかけて、FGF-2遺伝子の発現を誘導することが確認されている。
〈結果をうけての考察〉
- これまでのPRP治療では、製剤内の血小板が針内に詰まって投与されず、効率的に使えないという事象をしばしば遭遇する。PRP-Cは、血小板内に含まれるサイトカインのみを含み、凝集血小板が除去された製剤であるため、血小板が針内を閉塞せず、投与の利便性の高いPRPの代替製剤として幅広く活用される可能性が示唆される。
- 合成FGF-2の添加による治療は、効果に高い有効性を認めることもあるが、コントロールが難しく、その強い効果がリスクにもなると懸念される。血小板に含まれるサイトカインは投与された周囲組織の細胞からFGF-2を自然に合成させるため、FGF-2を敢えて添加する事が不要かつ高い効果が得られるのではないかと推測される。
- PRP-Cのサイトカインは、投与された周囲組織の構成細胞に遺伝子レベルで働きかけて、FGF-2を初めとする様々なサイトカインを自然な流れで合成させるサイトカインネットワークを利用して、皮膚の修復や再生に影響を及ぼし皮膚のリジュビネーションを促す。そのため、投与量は微量でも効果を発揮する。
銀座よしえクリニックは、患者さんの自己再生能力を引き出せる様な再生医療技術を提供しています。今後も、身体本来が持つ再生能力を手助けするという治療の基本理念で、自然で副作用の少ない満足のいく再生医療を提供してまいります。
論文概要
- 投稿先
- European Journal of Plastic Surgery®
- DOI
- https://doi.org/10.1007/s00238-023-02063-3
- 著者・所属
- 医療法人社団優恵会 理事長
銀座よしえクリニック 総院長
廣瀬嘉恵 - 株式会社 細胞応用技術研究所
藤田千春 - 銀座よしえクリニック都立大院 院長
青木晃 - 銀座よしえクリニック 最高技術顧問
聖マリアンナ医科大学 客員教授
井上肇